長澤まさみ・森山未来、【世界の中心で、愛をさけぶ】:四国88か所遍路の終わりに

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四国88か所遍路を無事に満願した翌日、高松市庵治町を訪ねた。2004年公開の映画『世界の中心で、愛をさけぶ』(監督:行定勲/配給:東宝)は、この町を舞台に大ヒットし、“セカチュー”ブームの中心となった作品です。
実際に歩いたロケ地の風景に触れると同時に、キャストのその後の歩み、そして公開当時の熱狂を振り返えりたいと思います。

四国88か所遍路満願から高松市庵治の町と「世界の中心で、愛をさけぶ」

四国八十八か所を巡る旅を終えたとき、心は達成感とともに不思議な静けさに包まれる。約1300kmの運転、無数の札所で手を合わせ、ようやく満願に至る。その瞬間、誰かに祝福されるわけでもないのに、胸の奥にふっと灯がともる。自分がたどってきた道すべてが肯定されるような感覚だ。

私は88番札所大窪寺での満願の余韻を抱えたまま、もう一日だけ旅を延ばした。向かったのは香川県高松市庵治町。2004年に公開された映画『世界の中心で、愛をさけぶ』(監督・行定勲、配給・東宝)の舞台となった場所だ。興行収入は85億円、観客動員620万人。小説から広がった“セカチュー現象”は映画・テレビ・音楽を巻き込み、あの年を象徴する出来事となった。スクリーンで涙した人々が、なぜあれほど心を揺さぶられたのか。その答えを探したくて、私は遍路の最後にこの町を訪ねた。

庵治観光交流館には、映画に登場した「雨平写真館」が復元されている。古いガラス窓越しに差し込む光を見ていると、そこに残るのは架空の物語ではなく、確かに息づいた青春の記憶のように思えた。展示室の片隅には、撮影に使われたスクーターが置かれていて、手を触れれば、役者たちの息遣いまで蘇ってきそうだった。

海辺へと足を伸ばす。王の下沖防波堤は、夕日がゆっくりと沈み、波が淡く光を返す。映画のワンシーンを知らなくても、その美しさに胸を打たれるだろう。けれど、あの作品を知る者なら、ここに立つだけで胸が締めつけられる。大切な人を思いながら、失うことの予感に怯えながら、それでも一緒に過ごす時間を慈しんだ若者たちの姿が重なって見えてしまう。

皇子神社のブランコにも足を運んだ。境内の木陰に揺れるその光景は、映画の中では切なさを増幅させる小道具だった。しかし現実に腰を下ろすと、子どもたちの笑い声に包まれ、むしろ温かい時間が流れていた。物語が投影した哀しみと、土地が本来もつ明るさ。その両方が重なり合う場所に、人はなぜか心を動かされるのだろう。

思い返せば、あの映画には豪華な特撮も奇抜な仕掛けもない。ただ淡々と、生と死、愛と別れを描いただけだ。にもかかわらず人々が涙したのは、誰もが避けられない「喪失」と向き合う時間を突きつけられたからではないか。スクリーンに映ったのは他人の物語でありながら、観客一人ひとりの胸に潜んでいた別れの記憶を呼び覚ました。平井堅が歌う主題歌『瞳をとじて』が流れるたび、心の奥にしまい込んでいた痛みが優しく撫でられるようで、多くの人が涙をこらえきれなかった。

遍路の旅もまた、どこかで“別れ”を孕んでいる。巡礼の道を歩き続けるうちに、出会った人々、見知らぬ土地の風景と別れていく。最後の札所で満願を迎える瞬間、喜びと同時に「終わってしまう」切なさが押し寄せる。それは映画で描かれた喪失感と響き合い、同じ心の深みを震わせる。

庵治の町を後にするとき、私は静かに涙ぐんでいた。映画の記憶に心を揺さぶられただけでなく、遍路の終わりと重ね合わせることで、自分自身の人生の一部と向き合っていたのだと思う。人はなぜ涙を流すのか。その理由は、失う痛みと同じくらい、確かにそこに「愛があった」ことを思い出すからだろう。

2004年、多くの人がスクリーンの前で涙した理由はそこにある。遍路を終えた私が庵治の海で涙した理由もまた、同じだった。愛は永遠には続かない。それでも愛した時間は永遠に残る。その矛盾に、人は揺さぶられ、涙する。そしてその涙の余韻が、人生の旅をこれからも続ける力になるのだ。

庵治町ロケ地の体験記

2004年の映画公開から約20年当時の熱気はあまり見られないが、面影は見つかりました。

雨平写真館(庵治観光交流館)

映画に登場する「雨平写真館」のセットが復元されており、展示スペースやカフェも併設。撮影時に使用されたスクーターも展示され、当時の記憶を直に感じることができます。
観光はここから始めるのよいが、自動車の場合、道路向かいの駐車場のキャパが少ない。その場合、歩いて20分位の王の下沖防波堤の駐車場が広くてよい。どちらも無料。

皇子神社のブランコ

庵治の小さな神社にあるブランコも映画の印象的なカットで登場。実際に腰を下ろすと、スクリーンの切なさよりも地域のお母さんと子どもたちの声に包まれた陽だまりの心地よさにうとうとしました。
ここは、雨平写真館より歩いて15分ほどの神社下から少し高台に上る。ブランコは子供用で大人には窮屈すぎる。高台からは海が見える。85番札所の八栗寺も遠くに見える。

王の下沖防波堤

ブランコのある高台から下に降りて10分位で着く。その途中、朔太郎が亜紀の父親に殴られる道を通る。
王の下沖防波堤は夕暮れ時、サクとアキが語り合うシーンを撮影した場所。屋島を望む穏やかな海と赤い夕日が広がり、映画のワンシーンを体験できる。

キャストの歩み(年表+当時の年齢)

🎬 大沢たかお(松本朔太郎〈大人〉役)

  • 当時36歳(1968年生まれ)。すでに『解夏』(2004)主演で存在感を示していた。
  • 2009–2011 ドラマ『JIN-仁-』主演。
  • 2019–2024 映画『キングダム』シリーズ 王騎役。
  • 2023–25 『沈黙の艦隊』主演・製作参加。

🌸 長澤まさみ(廣瀬亜紀役)

  • 当時16歳(1987年生まれ)。オーディション出身で、本作で一気にブレイク。
  • 第28回日本アカデミー賞「最優秀助演女優賞」受賞。
  • 2011『モテキ』ヒロイン。
  • 2018–20『コンフィデンスマンJP』主演。

🤝 森山未來(松本朔太郎〈高校生〉役)

  • 当時20歳(1984年生まれ)。演技派として注目され、日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。
  • 2013以降、イスラエルのダンスカンパニー参加。
  • 『苦役列車』『怒り』などで強い存在感。

🌿 柴咲コウ(藤村律子役)

  • 当時23歳(1981年生まれ)。『GO』(2001)で既にアカデミー賞受賞歴あり。
  • 2003–2006『Dr.コトー診療所』ヒロイン。
  • 2017 NHK大河『おんな城主 直虎』主演。

🎭 山﨑努(重蔵役)

  • 当時67歳(1936年生まれ)。日本映画を代表する名優として重厚な存在感。
  • 『天国と地獄』『復讐するは我にあり』など数々の名作に出演。
  • 本作では年長者・重蔵役として物語を支えた。

公開当時の興行収入と社会的反響

  • 本作は2004年の実写邦画で興行収入85億円・観客動員620万人を記録し、年間ナンバーワンとなった。[日本映画製作者連盟/WOWOW紹介/Wikipedia]
  • 原作小説は200万部を突破し、映画化によってさらに読者層を広げた。[eiga.comニュース]
  • 主題歌・平井堅『瞳をとじて』が社会的大ヒット。音楽と映画の相乗効果で“純愛ブーム”を加速させた。[WOWOW/音楽誌記事]
  • その後TBSドラマ化も行われ、映画・テレビ・出版を巻き込んだ**「セカチュー現象」**が社会に広まった。[press.moviewalker.jp]

YOUTUBE:映画編

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